「売れる本」にするために工夫できること
本は「縦書き」と「横書き」どちらにすべき?
KDPでアップロードできるファイルサイズ上限は?
Kindleの予約注文で何ができるの?
出版した本を更新後、読者に最新版をダウンロードしてもらうには?(更新通知について)
1冊めの本が売れないとき、どうすればいいのか?
既刊を読者に知ってもらうためには?
電子書籍市場を広げるために、個人でできることは?
本を宣伝するための、特設サイトの効果は?
わたしはプロフィールで、何て名乗ればいいの?
本の出版に慣れてくると、つぎは「もっと売れる本にしたい」という欲がわいてきます。とは言え、個人作家で数十万円、数百万円の印税を得ている人は指で数えられる程度です。
まだ市場が成熟していない電子書籍業界は、現段階でブレイクしているとは言いがたい状況。
Amazonという大市場で自分の本を出版できる、というワクワクした思いでいても、せいぜい月、数千円〜数万円いけばいいほうで、「・・・ようやく数冊売れた」という作家さんもおります。
管理人の場合は一年間で10冊近く出版して、一番売れた月で数万円、放置プレイ状態で数千円、という状態です。初期の頃は月に数百円でした。それでも、自分の書いた本を買ってくれる方がいる、という実感は素晴らしいものです。今はおこづかい程度でも、いつかはミリオンセラー!といきたいものです。
簡単に成果は上がりませんが、売れる本にするための努力は無駄ではありません。ちょっとずつでも、着実に効果があるのを実感できます。工夫したことがすぐに売上に反映しますので、書くだけではなく、売ることの面白さも感じられるでしょう。
売上に直結する、と個人作家みなが認めているのは「表紙」です。表紙の良さが売上を大きく左右します。しかしながら、物書き系でなおかつ絵描きスキルを持っている方はまれです。ですから、自分で絵が描ける方、絵描きさんとコネクションを持っている方は非常に有利です。
絵描きスキルがない場合は、お金を出して描ける方に依頼するか、ストックフォトのロイヤリティフリー画像を購入して表紙づくりするといいでしょう。
せっかく良い内容であっても、表紙が良くないとそれだけで読んでもらえません。美しい心を持った人が、見た目がアレだからという理由で評価されないのと一緒です。
どうしてもお金をかけたくない、という場合は「これでいいのだ!」と微妙な表紙のまま販売するか、それとも無料で提供されている商用利用可能な無料画像やイラストを発掘してくるしかないです。かく言う管理人も、初期は微妙な表紙で販売していました。回を重ねるたびに、綺麗に見えるように工夫しています。
無料画像を利用する場合は、商用利用可能であるか、事前にきちんと確認しましょう。イラストについても権利関係でもめると大変なので、買い切りにするなど、著作権の所在をはっきりさせておくべきです。
また、本の販売ページでは「内容紹介」の欄に、本の内容を書くことができます。読者がパッと見てどんな本なのか理解できるよう、あるいは読みたくなるような、そそられるキャッチコピーを書いておくといいでしょう。
「目次」
「おおよその文字数かページ数」
「縦書きか横書きか」
「本の内容、目を引くコピー」
「著者について」
このくらい載せておくと、読者が安心して購入できます。ここを手抜きするのは、もったいないです。
全部を自分が采配するので大変ですが、ちょっとした工夫やひと手間を惜しまないことで、売上が大きく変化します。
個人作家ライフ〜セルフパブリッシングはライフワークの5章「KDPの忘備録」でも表紙についてお話していますので、ぜひご覧ください。
電子書籍の「縦書き」と「横書き」、どちらでも本の内容は変わらないので「どっちでもいいんじゃない?」と思ってしまいそうです。ですが、読む人の感覚によって「こっちのほうがいい」と思えるジャンルがあります。
一般的に、小説のような文芸ジャンルに関しては「縦書き」が推奨されます。実用書の場合は、「縦書き」「横書き」に関するこだわりは薄いようです。
なお、画像を組み込むと、レイアウト崩れで苦労することがあります。電子書籍は「リフロー型」「固定レイアウト型」のいずれかの表示方法を選択したうえで、ファイルを作成します。「リフロー型」は端末の画面に合わせて表示されるため、文章を中心とした本に適していますが、レイアウト崩れが起こりやすいのが特徴です。写真集など、画像中心の本は、「固定レイアウト型」が推奨されています。
管理人の感触では、画像を挿入する場合、「横書き」の方がレイアウト崩れしにくいと思いました。
個人作家ライフ〜セルフパブリッシングはライフワーク作成の際、画像のレイアウト崩れについては完成ファイルをKindle端末に入れて、逐一、確認しながら修正したので大変でした。
「一太郎」で画像を含む本を作成しましたが、「リフロー型」の「縦書き」で作成した文書について、画像を挿入するページだけを「横書き」に設定するとうまくいきました。
「縦書き」の方が読者に好まれやすいですが、このように「横書き」よりも文章の体裁を整えるのに若干、苦労します。
【「縦書き」に設定した場合、しばしば悩む現象】
・画像を含むページのレイアウト崩れ
・数字、!や?が文章内で、横に寝てしまう
・アルファベットの縦中横で悩む
・ソフトの不具合か相性の悪さにより字がつぶれることも
とは言え、紙の本に慣れている読者からみれば、「横書き」は邪道に見えることもあるかもしれません。「横書き」の方が難易度は下がりますが、「縦書き」が好まれる分野では本の評価にも影響するので、手間暇かけられるときには挑戦したいところです。
KDPサポートから、アップロードできるファイルサイズ上限について連絡があったので、情報をシェアします。
・本の変換・アップロードサイズが最大50MBから650MBになった。
・本の中で使用する画像ファイルのサイズが最大127KBから5MBに。
・10 MB以上の書籍に関して、70%ロイヤリティにおける配信コストが差し引かれない。
公式に通達された情報です。(2014年5月)
マンガや写真集など、容量の重い作品を発表している方にとっては朗報ですね。
2014年8月に、KDPで「Kindleの予約注文」を設定できるようになりました。
本の出版画面の中にある「4. 本の発売オプションを選択してください」で「本の予約注文を有効にします」を選択して、90日以内の未来の日付を選択すると、設定できます。
平たく言うと、本の完成前にKindleストア上で本の発売をお知らせして、予約受け付けできるサービスです。
著者は事前にユーザーに本の発売を告知できるので、自分のブログやソーシャルメディアなどで「○月○日に本をリリースします。良かったら、今のうちに予約しておいてください」と、宣伝できます。予約注文が入ると、ストアのランキングに反映されるので、認知度を上げやすくなります。
ただし、未完成状態であっても、設定時に本の草稿をアップロードして審査に通る必要があります。
また、最終版のファイルは発売日の10日前までにアップロードしなければならないため、8割方、完成した状態で利用するほうが良いでしょう。原稿がほぼできあがって、校正に時間をかける段階で予約注文を設定すると安全です。
なお、間に合わなかった場合に、どんなペナルティがあるのかわかりました。
管理人が予約注文機能を利用したところ、途中のページに書いてありました。最終版のファイルが指定期日までにアップロードされない場合は一年間、「予約注文機能」を利用できないようにする旨、記載されていました。
最終版のアップロード期日は10日前のようです。また、最終版をアップロードすると、3日後くらいからリリース日を設定できます。計画的に、ご利用を。
なお、予約注文については、「個人作家ライフ〜「ゴーストライター」はじめました。 」でも触れています。
電子書籍のよいところは、出版後に誤字脱字に気づいたり、あとから最新の情報を付け加えたいと思ったときに、内容を更新して再出版できることです。紙の本にはないメリットと言えます。
KDPで本を更新するには、本の編集画面から再度、新しいファイルをアップロードして出版するだけです。大体、24時間以内に最新版をストア上でリリースできます。ただし、表紙画像を変更した場合、ストア上で反映されるには3日間程度時間がかかります。
なお、最新版にファイルを更新できても、読者のKindle端末やアプリ内にあるファイルは自動的に更新されません。ストア上で最新版になっても、読者の手元にあるのは旧バージョンのままです。ですから、すでに購入済みの読者に最新版を読んでもらうためには、「手続き」が必要になります。
KDPには「更新通知」という機能があり、作者から「更新通知」を依頼できます。「大きな修正」と判断された場合は、Amazonからすでに購入した読者に対してメールで最新版を案内してくれます。「小さな修正」と判断された場合は、メールで案内はありませんが、読者のアカウント内の「My Kindle」で最新版にアップデートの表示が出てきます。
しかし、「更新通知」をするかしないかの判断は、Amazonに委ねられており、審査の結果、基準に満たないと判断された場合は更新通知されません。
管理人は最新情報を付け加えた本を再出版し、「更新通知」を依頼しましたが、アマゾン様から却下されました。
理由は、「読書体験を損なうおそれのある品質上の問題を解消する目的で修正が加えられた場合にのみ、本の既購入様へ修正版を配信しております」という回答でした。もともと特に問題があったわけではなかった本に最新情報を付け加えただけだったため、「問題の解消」という目的に合致しなかったからだと推測します。
Amazonに「更新通知」してもらえない場合は、読者自身に手動で最新版へアップデートしてもらうしかないため、作者から読者に手順を案内すると親切です。
更新作業は意外と手間暇かかりますが、既存読者へのサービスにもなりますし、暇ができたら、ぜひやってみてください。
はじめてセルフパブリッシングをした個人作家は、1冊めの本の売れなさに愕然とすることが多いようです。「あんなに苦労して出版して、ソーシャルメディアでも精一杯、宣伝をしたのに。個人作家の本なんて、やっぱり売れないや」と、一冊めで挫折するケースも。出版してみると、辛口レビューよりも無関心のほうがキツイと気づくはずです。
こんなとき、どうすれば売れるようになると思いますか? ――その答えは「シリーズ化」です。1冊めが売れないなら2冊めで挽回。シリーズ化で、本の売上はよみがえります。
管理人はセルフパブリッシング関連の本である「Kindle出版で週末作家になる」「個人作家ライフ」のシリーズ化を行っています。シリーズの最新刊をリリースすると、まだ購入していない読者がついでに過去作を買ってくれるので、売上がアップします。ときには、まったく違うジャンルのものであっても「大人買い」されることがあります。
KDPの管理画面では、売上レポートをほぼリアルタイムで確認できます。レポートを見ると、シリーズものが同時に売れているので、同じ方がお買い上げいただいたとはっきりわかりました。実用書にかぎらず、小説でもシリーズ化を行うことで過去作の売上を引き上げることができるでしょう。
これから個人作家としてデビューする方は、あらかじめシリーズ化を前提にした内容の本を出版するのもひとつの手です。
反響が少な過ぎるとモチベーションが下がりますから、「1冊めがダメなら、2冊めがある!」と覚悟して出版することをおすすめします。「1冊めは売れないもの」と考えておくと、打たれ強くなれます。長い目で、成功を見据えてください。
何冊も出版するようになると、「読者に自分の過去の作品を知ってもらいたいな」と思うはずです。既刊を知ってもらう方法は、簡単です。
本の最後に既刊のタイトル・リンク先・内容紹介を掲載しておくだけです。ジャンルやシリーズごとに並べて見やすくしたり、読者が好みそうなジャンルの既刊をおすすめするのもいいでしょう。
内容紹介を詳しく載せている本は、好印象です。意外と読まれる部分なので、読者の興味を引くように工夫すると知ってもらえる確率が高まります。面倒くさい場合は、タイトルとリンクだけでも十分効果があります。
個人作家は自分で出版するほど興味がありますから、電子書籍がどういうものなのか調べているはずです。そしてKindle端末をもっていなくても、スマートフォンで読めることはご存知ですよね?
ですが、一般の認識は「電子書籍って何? どこでどうやって買えばいいの?」程度だと思ってください。まだまだ、一般への認知度が低い状況です。インターネットに少し詳しい人でもなんとなく知っているだけで、スマートフォンでアプリをインストールすれば、Kindleストアの本が読めるということさえ知らない場合があります。
たとえばあなた自身が無料キャンペーンを利用して自著を配布し、「Kindleストアで、本を無料でダウンロードできるよ!」と友人に伝えても、「端末持ってないから、読めないよ」という反応が返ってくる場合も。
そんなときには、「スマホから読めるよ! 無料でアプリをインストールすれば大丈夫!!」と教えてあげてください。スマートフォンのほか、タブレット端末でも利用可能です。スマートフォンを所有している人は多いので、「スマホで電子書籍が読めるんだ」という気づきが広がれば、電子書籍も一般に少しずつ、普及していくでしょう。
市場は大きすぎて個人ではなんともしがたいものですが、「電子書籍が簡単に読める」と周りの人に地道に伝えるだけで、ひょっとしたら口コミが起こるかもしれません。
このサイトがそうですが、自著を宣伝するために専用の「特設サイト」を作って宣伝できます。ポイントとしては、本のジャンルに合わせて属性の濃いユーザーからのアクセスをできるだけ集めることです。
本サイトでは管理人が出版したセルフパブリッシング関連の電子書籍を宣伝したかったので、「セルフパブリッシングに興味のある人」が集まってくるような内容にしています。
SEOで上位表示させて自然流入してきたユーザーだけなので、アクセス数はさほどありませんが、属性が濃いのでサイト経由での購入がほぼ毎月発生しています。特設サイトを作らなかった作品についてはリリース後を除き、売上が立っていないので、サイトの宣伝効果はたしかにあると言えます。
完成後は時折、メンテナンスする程度であとは放置です。ただ、サイトの作成には一冊本を書くくらいの時間がかかるので、売れ行きの割には労力に見合わないかもしれません。
なお、キーワード検索してやってくるユーザーは、役立つ情報を探したり、悩みを解決するためにやってきていますので、実用書でなければ成約は厳しいでしょう。小説について特設サイトを作っても、著者の知名度が低い場合は効果が薄そうです。
電子書籍を何冊も出版して著者として活動するようになると、ホームページやブログなどに掲載する「プロフィール」を考えなければなりません。
簡単なようで、意外と考えこんでしまうのが「自分の立ち位置」です。電子書籍のセルフパブリッシングが個人に大きく開かれたのはつい最近ですから、「個人で書いて電子出版している人」を指す、適切な名称自体がありませんでした。
従来は「自費出版」が個人で本を出すことを意味しましたが、お金を払って出版しているわけではありませんからそぐわなかったのです。
当初はKDPの利用者が目立っていたため、「なんとなく」利用者たちは「KDP作家」と自らを呼んでいました。
その後、国内の各電子書籍ストアからも個人で出版できるようになると、「まるでKDPが電子書籍を代表しているかのような表現なので、好ましくない」ということから「個人作家」へと変更したのです。
ところが最近また、「本を出しているのなら『作家』と名乗ったほうがいい。『個人作家』と名乗るのはアマチュアの自信のなさが透けて見える」という流れがやってきました。
管理人は、このたび、大変困惑しました。「KDP作家」は、バツ。「個人作家」は、ダサイ。じゃあ「作家」を名乗れ。すると、どこかから「自称作家様www」と揶揄する人も出てくる。
このような周囲の雑音を拾い、「わたしは何者なのか?」と再考しました。電子書籍を出版しようとしているあなたも、何と名乗ればいいのか、迷うのではないでしょうか。
もし、あなたが自分の職業から得た知識や経験を元に本を書くのであれば、職業をそのまま掲載すればいいでしょう。
問題は、出版している書籍と本業が、まったくなんの関係もない人たちです。
「ライター」は、お金をもらって頼まれた文章を書く人ですから、自分自身の書きたいことを書いて出版している人とは違います。職業ライター以外は、しっくりきません。
開き直って、「本業は○○で、余暇に作家活動をしています」とすべきでしょうか。
一般的に「作家」は商業作家を指しており、元々、管理人は「個人で出版している作家=個人作家」という意味で「個人作家」を名乗りました。そのままの意味で、特にそれ以上の意味もありません。
・商業作家は出版社を通して出版をしている人
・同人作家は、同人誌を作ってコミケで売っている人
・個人作家は、電子書籍でセルフパブリッシングをしている人
といったように、本を公開する手順や活動フィールドが違うだけで、作家自体に上下はありません。それぞれの特徴があるだけです。
芸術家、岡本太郎氏は、あるインタビューで「あなたの本業はなんですか?」という質問に対してこう答えました。
「本業? そんなものはありませんよ。
強いて言えば人間。猛烈に生きる人間だな」
――「岡本太郎が、いる」岡本敏子著・新潮社
岡本太郎氏の言葉を借りて言えば、「書いて出版している人、ただの人間」です。
電子書籍でセルフパブリッシングをしている人が何者なのかは、電子書籍自体の認知度がもう少し高まったときに、読者が決めてくれるかもしれませんね。